放課後の第二美術室で、私の描きかけの油絵を見ながら恵美は腕組みをする。

「へ~。これがね。なんか前とはちょっと違うよね?」

あの昼休みの後、恵美は『授業よりも大切だ』と私を保健室に連行し、結局午後の授業を2人でサボった。

保健室のベッドの上で恵美は私のひと夏の失恋経験を聞いて『大人になったのねぇ』と私の頭を撫でた。

そして『あ、その絵も見せてよ』と当たり前のように言った。



恵美の隣に立ち、油絵を見ながら答える。

素直な言葉が自然と口から流れていく。

「うん。同じように描こうとしても描けないんだ」

そう。あの三上さんから貰った写真を見ても、同じ絵はやっぱり描けなかった。

「そりゃ同じ絵を描こうなんて出来るわけねぇんだよ。巨匠だって出来ねぇっての」

呆れ声がして振り向くと、想像通りの島先生。

「でもちょっといい感じに見えるの私だけ?ねぇ、島先生。サチの絵って結局のトコどうなの?素人の私にはよく分からないんだけどさぁ」