……そうだった。

恵美は確かに1年の春先、ちょこちょこ美術室に顔を出しては『この色って何?これって何?何を思ってこういう絵って描くの?』と訊いてきた。

バカにされるのが怖くて。

笑われたりしないだろうか?格好つけてるって思われないだろうか?と話をはぐらかしたのは私。

入学して恵美と最初に交わした言葉は……『華!優等生だっていいじゃん!ねぇ、白川さん?』『……う、ん』だった。あれは……私を認めてくれていた言葉だったんだ。バカにした言葉じゃない。

あの時ちゃんと正面向いて話していたら……

あの時ちゃんと目の前にある気持ちを真っ直ぐに感じる事ができていたら……

きっと違った今があったんだろう。

きっと違った私がいたんだろう。


ああ、ホント私ってバカだ。

言わなきゃ伝わらないのに。伝える前に諦めちゃってたんだ。

怖がりで臆病で。

皆に合わせて上手くやってるつもりになってたのは私だけだったなんて、とんだ笑い話だ。