本当はずっと気が付いていた。

ずっと私の前では『僕』だった中山君が今日は『僕』じゃなくて『俺』って言ってた事。

ずっと私の前で煙草を吸わないでいてくれた中山君から今流れてくる紫煙の意味。

私、他の女の子と同じになっちゃったんだね。


「あ、それから、俺ホント白川さんの油絵大好きだったよ」

中山君は煙草を口端にくわえたままニッと白い歯を見せた。その表情は学校でお祭り騒ぎをして笑っている時の顔。

私、もう皆と同じ顔しか見れなくなってしまった。


ああ、本当に終わってしまったんだって実感した。