血の垂れた私の指を見て、島先生は両手を自分の頬に当てている。

ムンクの叫び。さすが美術教師。

「『切れただけ』じゃねぇよぉ!お前、血ぃ垂れてんじゃんよぉ!俺は血はダメだって言っただろうが」

「そんなん言われても──」

「もういいから!お前それ貸せ。まったく!!」

乱暴に取り上げられた塵取りと箒。

そして島先生は『とりあえず水で流しておけ』と言う。

先生がガシャガシャと片付けをする音を聞きながら、窓際についている水道で怪我した左手の人差し指を流す。

薄い赤が排水溝目指して流れていく。

こんなの痛くも何ともない。

「何、ボケーっとしてんだよ?水もったいないだろうが」

この教師は優しいのか冷たいのか判断しづらい時がある。

「傷、深いなら保健室行って……って保健室の先生お休みかぁ。面倒臭ぇなぁ、おい」

……生徒の怪我を面倒臭がる教師ってアリか?

「大丈夫だよ。傷は浅い」

心の傷は深いが。