「だから萌木の『あれ』って言うのも、いい気味だって思ってた」

三上さんは堂々とそう言う。潔すぎて『あ、そうですね』と言いたくなってしまう。

「でも。神様は良く見てるね。私もしっかり痛い目見た」

脳裏にあの日の三上さんの背中が蘇る。

午後の授業で教室に戻った三上さんに『三上って何てペンネーム?マジ教えてよ、笑わないから』と一部の生徒はしつこく、詰め寄った。

笑いながら繰り返される言葉に三上さんがしたのは無言で通す事。

帰りのHRが終わるまで彼女は貝のように何も言葉を発しなかった。

そして私はその小さく震えるような、でも凛とした背中にひとりずっと責められていた。