「ねぇ、名前何ていうの?」



 思わず聞いてみたくなった。




「えっ…原 愛之介(はら あいのすけ)」



 少しの間の後、言いたくなさそうに目を反らしながら小声で名乗った。



ほおと耳が、赤くなっているのがわかる。



「愛之介だなんて、可愛いね」



 思わず私は、吹き出してしまった。




「みんなそうやって、絶対笑うんだもん。



嫌だ、もぅ!



呼び方、愛でいいよ。



そっちは?」



 恥ずかしそうに、頬をひきつらせ言った。




「私は、市川 遥(いちかわ はるか)。



すぐそこの東高の一年」



 ふと思った。




タメ口でずっと話してるけど、もしかして年上だったりして?




「へぇ〜遥か。



女の子らしい名前だね」



 そう言うと、掃除をしにフロアへと去って行ってしまった。




名前だけでも誉められると、ちょっと嬉しい。