「あ〜らぁ〜、広(ひろし)ちゃんじゃないのぉ〜♪♪♪」




 そう満面の笑みを浮かべ、内股で走り寄ってきているのは、確実に女の人というより男の人だ。



青くなってるヒゲのそったあと、それにちょっと不自然な眉。




お化粧も何だか濃いし。



フレアーのスカートをはいていたから、ショートカットの女性に見えたんだ。





 ちなみに、先輩の下の名前は広なんだ。




そんな風に呼ぶ人は、学校ではいない。




「驚いた?」



 と、先輩は微笑んだ。




 私は圧倒されながらもうなずいた。




先輩は、私の驚いている様子を、楽しんでいるみたいだった。




「京ちゃん、久々です!



 なかなか来られなくて」



 笑顔で先輩は言った。



「そうねぇ!



伸びたわね。



さぁ、どうぞどうぞ〜」



 そう、京ちゃんと呼ばれていた人は、大きく腰を振りながら歩き、先輩をセット面へと案内した。




「雑誌でも読んで、待ってて」



 それだけ言い残し、先輩は去っていった。