「沙~穂ちゃん♪」




気がつくと、さっきの男が後ろから覆いかぶさるように、私に抱きついてきた。




「え・・・ちょ」




「帰っちゃうの?部屋あっちだよ」




男の腕から逃れようと、必死で抵抗するものの、男の力には逆らえない。




「・・・離して!」




バンっという大きな音が廊下に響いていた時には、男は床に倒れこんでいた。




「・・・っ」




男は頭を押さえて立ち上がると、私をものすごい形相で見つめてくる。




─────怖い。




さっきのずっと笑顔を保っていた顔とは思えない、獣のような顔。




「きゃっ」




目の前が真っ暗になったかと思うと、私は壁に押し付けられていた。