「濡れなかったか?」




心配そうに顔を覗き込む鉄平は、髪をかきあげて、部室のドアを閉めた。




あまりの暑さに扇風機をつける。



鉄平の髪が揺れる。


私の前髪も揺れる。





「はぁ~、終わった」



鉄平は、ドサっと音を立ててソファに座った。



「何が終わったの?テニス?」



「ああ、そう。テニスのコーチ。楽しかったけど辛かった。意味わかる?」



「わかんない」





私は前と同じように鉄平にペットボトルを渡した。




「また間接チュ~したいの?」


「鉄平のバカ!」




そう言いながらも、鉄平が残したお茶をドキドキしながら飲んだ。





「だからぁ~、お前かわいすぎるんだって。もう我慢できねぇよ」





立ち上がった鉄平が、近付く。



あの時と同じ。




でも、もう絶対逃げない。