こつ、こつと、一歩一歩の音が、

僕にはスローモーションのように、

ゆっくりと聞こえてきた。

あれ?あいつ・・・  だよな?

こんなに・・・

「・・・可愛い。」

机を2つ挟んでいたにも関わらず、

リョータの声が、はっきり聞こえた。

僕は、はっとリョータの方を見た。

「名前、紹介してくれ。」

ムラさんが続けた。

「黒板に書いて。」

「はい。」

カツ、カツ、と黒板とチョークの

ぶつかる音だけが、教室に響く。

「レナです。これからよろしくお願いします。」

「はい、花田れなさんです。分からないことがあったらみんなに聞けよ。」

静かだった。

多分、ほとんど全員が、レナに見とれていたんだ。

「じゃ、あの1番後ろの席に・・・。」

え。

そうか、そういえば僕の隣は誰もいなかったな。

机があるはずなかったんだ・・・

こっちに向かってくる彼女を、

気にしないふりをして、なるべく窓のほうを見た。

でも・・・

「よろしくね。」

と、僕に微笑みかけた彼女を、

いつの間にか僕は、ずっと見つめいていたんだ。