それを見た瞬間、杏珠の心臓がドクンと大きく跳ねた。

009…杏珠はあの日のことを思い出した。



ゆっくりと耳の裏を指でなぞる。


廊下に突っ立ったままの杏珠を見て母親が「どうしたの?」と声をかけた。

「いや、なんでもない。」

と返事をして、また部屋へ戻っていった。