「舞様、お母様がお呼びです」

華音が扉の外から言った。

まただ。何回目だろう?

多分内容は成績のこと。

「ありがと華音。すぐ行く」

とは言ったものの……

扉までの道のりが

広い部屋なわけでもないのに

重い足取りのせいで

まだドアノブさえ掴めていない。



長い赤いカーペットの

敷かれた廊下を進んで

凄く長く感じられる

階段を下りた。

「こちらです」

華音に案内されたのは

あまり入ったことのない

会議室のような所。

そこに「やっと来た」と

怒りオーラ全開の母と

黒いスーツを着た

若そうな男の人…………



私は黙って母の隣に座った。

「舞、先生にご挨拶は?」

……先生?とは思ったけど

聞き間違いだと思い、

「……初めまして」

と愛想笑いで軽く流しといた。

「先生、この子最近、中学の勉強に

ついて行けないみたいなんです」

ほら、当たった。また勉強の話……

「…大丈夫です、お母さん。

必ず舞さんの成績をupさせて見せます」

もう勉強だけじゃなくて、

二人の話にもついて行けない……

「……何の話ですか?」

気が付いたら口が勝手に喋ってた。

「何の話って舞……あなたがろくに

勉強できないから、本城先生に

家庭教師を頼んだのよ」

…………はぁ!?何それっ!?

聞いてないし。

「よろしくね、舞さん」

本城先生のキラースマイルが

この時、もの凄く恐ろしい

悪魔の笑みに見えた。