『10……9……8……』

「雅人!沙耶香!いいからそこの蒸気に飛び込んで、手錠を外すんだ。熱いのも一瞬なら大した火傷も負う事はないはずだ!」

仁史は戸惑う雅人に声をかけた、が、恐怖に硬直した雅人の頭には聞こえていなかったようだった。

「沙耶香!がんばって!
ほんのちょっと蒸気を潜れば手錠は外れるから!」

美鈴が親友の沙耶香に声をかけた。


そっと仁史は切断されたパイプの片方側を足で押さえつけた……

靴底がジュッっと音を立て、ゴムが溶けるような嫌な匂いが充満した。

「さぁ……来い」