誰か一人を殺さなければ皆殺される。

自分は殺されたくはない。

そして殺したくもない。

自分達が助かる為に必要なファクターは目の前にそろっている。

だから、誰も声をあげられなかった。

倫理観や正義感よりも自己防衛本能と、恐怖による凝固がその体を支配していた。

ただ一人を除いて。

「わかった。仁史の手錠を外してくれ」