「それやったら一緒に卒業できへんやん…」


見るからに私は不服ですという雰囲気を全面に押し出している。


「ていうか一緒に3回生になっても一緒に卒業できないから。半期ズレるから」


留年のシステムをみのりに教える。

今日教授の研究室に行く前に学生課で仕入れた知識だ。


「そーいうことゆってんのちゃうし…」


みのりの顔は晴れない。

おそらく2年もの間ときにグダグダときにヘラヘラ連れ添ってきたオレとの関係が変化するのを恐れているのだろう。

ならばそれがまったくもって意味のない懸念だということを教えてやればいいのである。


「あのさ、みのりちゃんよう」
「なによう」
「回生が変わってもオレらの関係は変わらんよ」
「え?」


何言い出すんだこいつという顔をしているみのり。


「オレらは2年もの長きにわたり、グダグダヘラヘラと付き合ってきたでしょうが。回生が変わるくらいでこの鉄の絆が断ち切れてたまるかよ」
「い、いやそりゃそうやけど」


途端、戸惑いつつも機嫌よさ気に変わるみのり。

二年の付き合いでよくわかっている。

こいつは剥き出しの好意にめっぽう弱いのだ。


「それともみのりは後輩とは遊べないのかな?そーいやみのりが後輩と遊んだって話聞いたことないよね」
「そんなこと言ってないやろ!」
「てかみのり友達オレ以外にいるの?」
「おるわ!えーっと沙織とか、栞とか…」


あとが続かない。

みのりは友達が少ないのである。

どうも高校時代、いじめっぽいことにあっていたらしく、人付き合いが苦手なようなのだ。

まあ詳しくは聞いてないし、聞くつもりもないからよくは知らない。

話したいというなら聞くが、別にこちらから過去のことを根掘り葉掘りほじくってまで聞く必要がない。

肝心なのは、いつだって今だ。


「みのりちゃんが友達少ないのはわかったから。早く食べちゃわないと授業遅れるよ?」
「ムカつく」


その後一発殴られて食器をみのりの分まで片付けさせられたオレは、授業に出るみのりと別れてサークル棟に向かうのであった。

おもにヒマつぶしのために。