「それからまた尾けられたことは?」
「2回くらいあったと思う。あれから気をつけてたからわかったんだけど」


十日間で三回。結構なペースだ。

そうなると初めて気づいた十日前以前からも尾行されていたのかもしれない。


「同じように急いで家に帰ったの?」
「1回交番に駆け込んだんだけど、しばらくかくまってくれて、その間に周りを見まわってくれた。結局犯人は捕まんなかったけど…」


ふむ。少なくとも三回同じことがあったということは恵子ちゃんの勘違いではなさそうだ。

というか本当に恵子ちゃんを尾行している人物がいると仮定しないと話が進まない。


「んで、なんで犯人があのミルクティーの人だと思ったの?」
「笑ったの」
「ん?」
「交番に逃げた次の日、あの人がコンビニに来て、何も買わずに私を見てニタって笑ったの」


ダメだ。恵子ちゃんの証言はあまり信用できない。

ミルクティーの人が恵子ちゃんに好意を持っている確率は高い。

どれだけ混んでても恵子ちゃんのレジに並ぶくらいだし、それはまず間違いない。

それなら彼が恵子ちゃんに微笑みかけることくらい、いくらでもあるだろう。

たまたまそれが恵子ちゃんが交番に駆け込んだ日の翌日になっただけということは十分にありえる話だ。

常連さんなのだから。

その可能性を考えもせずに彼が犯人だと決めつけてしまっている。

単純な思考と軽い被害妄想。

これははたして恵子ちゃんが元来持ち合わせている性質なのか、それともストーカーへの恐怖が恵子ちゃんの思考を鈍らせているのかどちらだろうか。

もともとこういう子なら尾行されているという話も信憑性は薄い。

過去の付き合いから自意識過剰な女と被害妄想が激しい女の言うことは全く信用ならないのはすでに学んでいるのだ。