ことのはじまりはかれこれ十日前に遡る。

いつものようにコンビニでの業務を終え、帰宅する恵子ちゃんは一定の間隔で付かず離れずついてくる人物がいることに気づいた。

折しも時刻は深夜帯。

恵子ちゃんは身の危険を感じ、家路を急いだ。

するとどうだろう、その人物も足を速めてついてくるではないか。


これはいよいよ危険であると感じた恵子ちゃん。

しかし突然の事態に頭は働かず、ただただ混乱と不安に苛まれながらさらに足を加速させることしかできなかった。

幸い恵子ちゃんの家はマンションで母親と二人暮らし。

正門を焦りつつも掻い潜り、エレベーターに乗り込み、意味もなくエレベーター内で家がある階のボタンを連打し、降りたあとは全力で家に駆け込み、お気に入りのクッションを抱え込んで、仕事で未だ帰らぬ母を今か今かと泣きながら待っていたそうな。


その後、恵子ちゃんは帰宅した母に泣きながら我が身に降り掛かった一連の出来事について説明する。

母は共に不気味がってくれ、怯える恵子ちゃんを励ましてはくれても、具体的な対処策などは思いつかぬようで、連れたって警察に行き同じように一連の出来事を説明し対策を求める。

だが警察は事件として取り扱ってくれずに防犯ブザーの携帯をアドバイスするだけにとどめ、憤慨する母と呆然とする恵子ちゃんを迷惑そうに追い返したのであったそうな。