唐突に電子音が鳴る。米が炊けたようだ。

さすが早炊き早い。


「んじゃオレ焼き飯作るから。あとはお若いもの同士で」
「いやいやいやこんな空気で放置しないでくださいよ。正直キツイっす!」
「本当にアホだなおまえは。みのりはまだおまえの名前すら知らんのだぞ。自己紹介くらい自分でしろ。あとそういうことを本人を前にして言うな」


そう言ってオレは炊飯器を片手に台所に移動した。

居間からポツリポツリとだが、会話が聞こえる。

みのりの人見知りは筋金入りだが、改善できないほどではないと思う。

機会を逃さず経験値を稼がせれば、少しはマシになるのではないだろうか。

そこまで世話を焼く必要があるかとも思うが、友人としてこれくらいなら親切の範疇で収まるだろう。

いやしかし…。



その後もお節介ではないかとか、ありがた迷惑、エゴなどの単語が浮かびながら米を焼いていたが、居間から笑い声が聞こえてくるにいたって、オレの葛藤はひとまず終りを告げた。

あとはメシ食いながらみのりの寝ぐせを笑うだけだな。

オレは焼き飯を三つの皿に盛りつけた。