これが女ならキャバで時給二千五百円の仕事があるのだからつくづくやりきれない。

実際夜のお仕事で大金を稼いでいる女友達がそこそこいる。夏目もその一人だ。

ウワバミであり、器量も良く、頭も回る。

彼女の時給は最近三千二百円を越したらしい。

ぢっと手を見る。


「おう。やっとるのう」


芸大生をやっているわりにそこまで汚れていない手から視線を上げると、そこには酒瓶をこれでもかと買い物カゴに突っ込んだ宏先輩が立っていた。


「ちわっす。飲み会ですか?」
「おお。今日は翔平んとこや」


大学生というものは上記で述べたように大抵金がない。

なので出費を極限まで減らすために下宿している人間の家で飲み会を開くことが多々ある。

そういうときの会場は殆どの場合大学近辺になる。

単純に集まりやすいし、翌日の授業にもちゃんと出席できるからだ。

よって大学からも程近いこのコンビニには、週一の割合でだれかしらサークルの人間が酒を買いに来るのだ。

そしてだいたい三回に一回はこの宏先輩だった。

彼はアル中一歩手前だ。


「ほなお疲れ。またおまえも来いや」
「ういっす。お疲れ様っす」


こうして今日も時間的には授業に出席できる安心感で結局授業に出ることのない酔っ払いが誕生するのであった。