「はっ?おしまい」

「うん。
で…すんげえ後悔して、連絡したけど、まったく無視でさ。しまいには携帯まで変えられてた。


恵ちゃんに助けて貰ったんだ。」



「恵子?
俺…今初めて…聞いた。」

「話す時間もまともにとってなかったろ。

でさ。会った瞬間にグーで2発殴られた。

グーだよ。
あの子クラブ…かなり強かったし、鍛えてるだろ?
めちゃくちゃ痛かった。」

俺は殴られたことなんてなかったな。

確かに二の腕とかめちゃくちゃ締まってた。

「『貴子と私の分』で二発。
貴子さ。コンパに行ってたのは断れなかったって。友達作ったり、学校に
馴染むので必死だったって。

でも恵ちゃんと会った日はさ、必ず言ってたって。

『いつか結婚したいな』って。


で、さっきの俺みたいに妄想しだすんだって。


『子供は3人がいいな。』
『女の子だったらかわいい髪型にしてあげるんだ』って


『ゴミ持って家を出て、一緒に仕事に行くんだ。亘は私の仕事も認めてくれてて、家事も一緒にしてくれるの。
分担じゃなくて…一緒に…』って

なのに…何言った?って」


「分担じゃなくて一緒に…ってかわいいな…」


「だろ。でも俺さ、腰掛けとか、他の男と結婚とかさ。

最悪だろ。」


「どうしてもあきらめられなくてさ、婚約指輪のつもりで買ったんだ。
貴子のは石ついてるし、36回払いで。」


「……36回!!」


「そっ。

家、学校、駅、バイト先いろんなとこで待ち伏せしたんだけど…

全滅。


恵ちゃんのバイト先のカフェに呼び出されてさ、貴子と鉢合わせさせてくれた。」