貴子はきっと…

私が言い出すのを待っててくれた。

恋バナでも、相談でも、愚痴でも。
多分なんでもよかった。

噂話を聞くたびに唇をかみしめてたのかなって思う。


そんな貴子にはひどく申し訳ないなって思うけど




それでも…幹斗くんのことは誰にも言えなかった。



もしかしたら、昨日の平岡先生みたいにバレバレなのかもしれない。





貴子も…平岡先生との噂はデマだってすぐに気付いてくれてたし…




ただ…なんとなく相談することがなかった。


どこが好きかと聞かれても………

イマイチ…はっきり言えない


だってけっこうひどい人なんだ。




女の子に向かって『うざい』とか『キモい』とか

椅子けられたり…

人の顔は『あれはない』とか

プリントもいっつもはんぶんこだし。

無愛想だし。



…………
うん………
ひどい人だな……
………



でも『好き』の気持ちは止まらなかった。


さっきみたいに相談して、やめろと言われることが嫌だったのかもしれない。


『やめろ』のブレーキは頭の中でとうに出してた。
しかしこのブレーキ…どうにも利きが悪い…


というかまったく利かない。