「何で笑えるの!?死に行くようなもんでしょ!?日本が負け…」


そう言いかけた時、左頬に痛みが走った。


思わず頬に手を当てる。


「死に行くようなもんなんて言うな。今国のためにどれだけの人が戦地で頑張ってると思ってんだ。死に行ってるんじゃない、守るために頑張ってんだ」


郡ちゃんの低く静かな声に、顔を上げられない…。


「叩いてすまなかった…」


郡ちゃんの優しい手が、頬を押さえる私の手を覆った。


そうだ…。みんな死にたくて行ってるわけじゃないんだ…。


誰だって帰るのを夢みながら、戦地に向かってる。


「ごめんなさい…」


俯きながら小さく呟くと、郡ちゃんの手が優しく頭をなでた。


「待ってる側の方が辛いと思うよ。…でも、八重子は俺が生きて帰るって信じてて」


そう言った郡ちゃんの笑顔は、とても優しく、だけど涙が溢れるほど切なかった。