開店時間が過ぎ、やがてちらほらとお客様が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
 今井さんが明るく声をかけたのはいつもの男の人だった。
 パソコンを開いて黒ぶちのメガネをかけて、今井さんにコーヒーを頼む。この店の常連客。
 今井さんと何を話しているのか知らないけど、まるで共通の趣味を持った男同士の友人みたい。
 彼は一体あのパソコンで何をしているんだろ。気になる。
「今井さん」
 戻ってきた今井さんに声をかける。
「あの男の人、いつもパソコンで何をしてるんですか?」
 今井さんはその男の人の方をちらりと振り向いた。
「んー、手代木さんのこと?秘密だよ」
 えーっ!でもしょうがない、か。
「それよりさ」
 今井さんが私の耳に顔を近づけてきた。
「今夜会えない?」