短い髪の毛が指先をくすぐり、すごく気持ちいい。


『ゴリ吉』はじっとして、そのまま動かない。


あぁ、心が穏やかになる。

「私ね、みんなに慰められるその子を見て思ったの。」


『ゴリ吉』の頭を両手で抱える。


「誰もいないって。
その子の周りには友達がいるの。
あだ名や下の名前で呼び合ってる友達が。
私にはあだ名や下の名前で呼んでくれる人誰もいないの。
中学の時もそうだった。
だから高校に入ってかえようとしたのに、何もかわらない。
私には誰もいないの。
話す人はたくさんいるわ。でも友達じゃないし、もちろん親友もいない。
誰もが呼ぶわ、『蝶野さん』って。」



黙って聞いてる『ゴリ吉』の髪にほほをすりつける。


「友達に囲まれて泣いてるその子がうらやましくて、ただ、うらやましくて。」


いつもそう。


私には誰もいない。


両親さえも側にはいてくれない。



学校でいじめられてるわけでも、両親に虐待されてるわけでもない。


でも、なにか見えない壁がある。