「権田原、行くから、アップしとけ。」


コーチの指示でアップを始める。


一年生の僕が、練習試合とはいえ、試合に出れる。


先輩たちに迷惑かからないようにがんばろう。


「よし、権田原いくぞ、佐々木と交代だ。」


えっ!


コーチ、佐々木先輩と交代だなんて、そんな事したら。


やばい、佐々木先輩がこっちに歩いてきた。



「いやー、佐々木先輩いかないでー。」


「佐々木くん交代しないでー。」



予想通りの黄色い悲鳴。



「権田原、何してる。」


コーチの声に覚悟を決めて、上に着ていたジャージを脱ぎ、ユニホーム姿になる。


「うわ、佐々木先輩の代わりゴリだ。」


観客が気付いた。


く、来るぞ。


「いやー、キモい。」

「背中に毛がある。」

「最悪ー、胸毛見えるー。」

「出てこないで。」



覚悟を決めていたけど、予想通りの声に落ち込む。


さっきのが黄色い声なら、これは黒い声になるのか。


「少し、足捻ったからさがる。
外野の声は気にするな。
あとは任せた。
中学で全国優勝したお前の実力見せてくれ。」


佐々木先輩は、僕の背中をポンっと叩き、救急箱を用意しているマネージャーのもとに行った。



ほんと、かっこいい。



がんばろうとは思っていたけど、さらにがんばろうと思っちゃうじゃないですか。



「ゴリ、今からお前にボール集める。
どんどんシュートしてくれよ。
今から逆転するぞ。
中学で全国優勝したお前の実力見せてくれ。」



なんか、キャプテン、さっきの佐々木先輩と同じ事言ってる。