多恵はニコニコと笑って、楽しそうにしていてくれた。
会社にいたときは、この世の終わりじゃないかってくらい落ち込んでいたので、笑うようになっただけでも良かった。
グラスに入ったカクテルを飲みながら、私も彼女に微笑んだ。
「最近、少しずつだけど前みたいに笑ってくれるようになったよね」
不意にそう言った多恵の言葉に、私は一瞬首をかしげた。
「え?私が?」
「遥の他に誰がいるって言うのよ」
そうだった。
この世の終わりじゃないかというくらい落ち込んでいたのは、多恵よりも私だった。
何もかもが真っ暗で、先のことどころか明日のことさえも考えたくなくて、自分を責めて、そして心のどこかで和仁を罪人のように思う一方、自分の元にいつか戻ってきてくれるんじゃないかと期待もしていた。
「私……前よりは笑うようになったかな」
独り言のような私のつぶやきだったけれど、多恵は即座にそれを拾ってくれた。
「うん!前に進めてるって感じするよ。何か気持ちに変化出てきたの?」
「変化………」
松崎くんのおかげなのだろうか。
私には分からなかった。