あの時、あの場にあのままいたら、私はどうなっていたのだろう。
きっとつらすぎて、切なすぎて、笑顔なんかは崩壊して、和仁の彼女を不安に陥れるようなことになりかねなかった。
実際、和仁の顔を見た瞬間に、私の体は奇妙なくらいに震えていたのだ。
会えて嬉しいというのとは少し違った。
だって和仁の隣には彼女がいた。
幸せそうな二人を見るのだけは、心の奥から絶対に見たくなかったからだ。
少しだけ眉を寄せて、懸命に私の気持ちを探っている松崎くんの表情は、今までで一番分かりやすく困っているようだった。
「松崎くん。もう分かったでしょ?私……まだこんなに忘れられないの。このまま二人で会っていても……あなたといても、どこかで元彼のことを考えているかもしれないんだよ」
私はずっと曖昧にしてきた松崎くんとの関係が、彼に対して失礼じゃないかと思っていた。
距離が縮まりそうになると、私は怖くてまた一定の距離を保とうと逃げたくなる。
松崎くんがいい人だから、優しいからと言って彼と恋人関係になるかどうかなんてまだ分からないのだ。