「呆れてないよ」
私はそう言ったあと、松崎くんの顔色を伺った。
彼は表情は穏やかなままだった。
いつもの松崎くん。
でも目の奥に、心なしか不安が見え隠れしているような、そんな気がした。
私がなんて言葉を返すのか、それを聞くのが怖いのだろうか。
「本当のこと言うとね、今日は松崎くんに助けられたの」
「え?」
松崎くんは私の言葉がとても意外だったのか、目を丸くして聞き返してきた。
「俺は…何もしてないですよ」
「ううん。あの場から連れ出してくれたから」
あの場…というのは、和仁たちと再会した場所のことだ。