ずっとずっと、部屋のチェストにしまい込んでいた和仁からの手紙の存在。
それが私を縛り付けている。
あの手紙を最後まで読んでしまったら、私はさらに和仁のことを色濃く思い出して、胸の真ん中あたりをギュッと強く掴まれるような感覚に陥ってしまう気がしていた。
焦げ茶色の少し伸びた髪の毛。
大きくはないけれど、私を包んでくれる彼の体。
本を読む時は必ず右手の人差し指がトントンと小さくリズムを刻む癖。
そして、抱きしめると絶対に言ってくれた「好きだよ」という、大切な大切な温かい言葉。
そういえば、いつからか和仁は「好き」という言葉を口にしなくなった。
気持ちを言葉にするのは簡単だ。
だけどそれはとても重要で、難しいことなのだ。