「ごめん。無理には聞かないから」


「…ありがとう」


多恵が申し訳なさそうに目を伏せたので、私はお礼を言いながらも罪悪感を感じた。


これだけ心配してくれているのに、何も話せない自分が情けなかった。


「新しい恋しちゃえば?きっと失恋なんて忘れられるよ」


話題を変えようとしたのか、多恵は明るい口調でそんなことを言っていた。


「新しい恋、ね」


多恵の言葉をそのまま口にして、私は虚しくて笑いそうになった。


恋ってなんだっけ?


と、誰かに問いかけたくなるくらい、新しい恋をする自信はなかった。


まだ和仁との記憶が残ったままで、新しい恋なんてできないような気がした。