「親切にしていただいてありがとうございます。あなたにも用事があるでしょう?私はもう少し休んでから行くので、大丈夫ですよ」


私は付き添ってくれる、名前も知らない彼に申し訳ない思いでそう言ったけれど、彼はちっとも気にしていないような口調で


「いえ、俺は平気です。あなたが落ち着くまで一緒にいさせてください」


と首を振った。


押し付けがましくなく、それでいて自然にそこにいてくれるような、不思議な人だと思った。


「ありがとう」


私は笑みを彼に向けた。


そういえば、最近あまり笑っていなかったな。


知らない誰かの優しさに触れて、ほんの少しだけ心が温かくなったのかもしれない。