「そろそろいい?」


手を繋いでるだけでドキドキして幸せな気分に浸っていたところへ、不意に飛び込んできた松崎くんの言葉で一気に現実に引き戻される。


『そろそろいい?』ってどういう意味だろう。
手を繋ぐの嫌だったのかな。


不安になって彼を見ていると、松崎くんの両手が伸びてきて私の体を包んだ。


「やっと、やっと通じ合えた」


耳元で彼の声が静かに響く。


松崎くんのその言葉からは、なんだか切なさも伝わってきた。


そうだよね。
ずっと私に好意を持ってくれていて、いつも私を外へ連れ出してくれたよね。


それなのになかなか応えてあげられなくてごめんね。


私は彼の背中に手を回して、ギュッと抱きしめた。


「ありがとう、好きになってくれて」


松崎くんにはありがとうと何回言っても足りないくらいだ。


すると、彼は私に回していた腕をそっと解いて体をゆっくり離した。


「どうしようもなく好きだな」


こんなに近い距離で言われる甘い台詞が、私だけに向けられていると思うと少し照れくさいような気もしたけれど、今は酔いしれよう。


「私も好き」


確認し合うように私も言うと、松崎くんはとても大切なものを扱うみたいに、優しく、優しく、そっと私の唇にキスをしてくれた。


私はこの人を幸せにしたい。


心から思った。






こんなに愛しいと思える人に出会えて良かった。


彼を信じて良かった。


泣いてばかりいた日々は無駄じゃなかったんだと、今なら言える。