「大丈夫ですか?」
今度は男の人の声。
こんなところでしゃがみ込んでいたら、みんなが心配するに決まっている。
私は顔を上げずに「大丈夫です」と答えた。
「次の駅で降りませんか?」
その人は私の腕を引いて、ゆっくり立たせてくれた。
「はい…」
電車の中がざわついていたので、小さくうなずいた。
恥ずかしさと申し訳なさと、自分が情けなくて悲しかった。
電車が駅で停まり、私は見知らぬ男の人と降りた。
彼はよく見ると私より若い感じの人で、おそらく大学生ではないかと思うような雰囲気だった。
「歩けますか?」
彼に尋ねられて、私はまたうなずいた。
すると、ずっと私の腕を支えているのは悪いと思ったのか、彼は私から手を離し
「じゃあ、ちょっと座って休みましょう」
と歩き出した。