和仁が来た瞬間、私は無意識に立ち上がっていた。
私の姿に彼もすぐに気づいた。
「あ……遥」
賑わう室内で、和仁の声だけはハッキリ聞こえた。
確かに私の名前を呼んだ。
「おーい、カズ!久しぶりー!」
私たちの間を裂くように男友達が和仁の元へ来て、強引に引っ張っていく。
みんな久しぶりなのだから仕方ない。
再会の感動を分かち合いたいのは同じ気持ちだ。
その後も数人が到着し、全員が集まったところで宴会の開始となった。
大量のおつまみや食事がテーブルに並べられ、お酒の入ったグラスがあちこちに置かれる。
「かんぱーい」
私もそばにいる友達とグラスを鳴らして乾杯した。
チラッと和仁の方を見やる。
彼は私とはかなり遠い席に座っていて、話しかけることも出来ないような距離だった。
でま、和仁は私の方を見ている気がした。
きっと私たちは今、目が合っている。
何かを言いたげな目をしていた。