「すごく嬉しいです。今までで生きてきた中で一番。ありがとうございます」
ギュッと彼の腕に抱き締められながら、松崎くんの精一杯の気持ちが込められた素直な気持ちに私の胸までいっぱいになりそうになった。
さらに言うと、彼の心臓の鼓動が丸聞こえで、ものすごい速さで脈打っているのでなんだか面白くなってしまった。
これは、内緒。
ほんの少しの間そうしていたけれど、松崎くんは悪いと思ったらしく素早く私を離してくれた。
「本当にすみません。あの…俺………今、冷静になりました…」
「あはは、今?」
いつもの落ち着いた口調で、大学生とは思えないくらい大人だと思っていたけれど、今日は全然違って見えた。
「コーヒー、私も飲んでみるね。ありがとう。山登り、楽しみにしてます」
私が笑ったからか、彼は少し安心したような気まずそうななんとも言えない笑みを浮かべた。
「はい。また連絡します」
ゆっくりとした足取りで道を引き返していく松崎くんを見送りながら、私はまた自分の手が小さく震えていることに気づいていた。