「ふふっ…」
思わず口から笑いがこぼれてしまった。
「?」
松崎くんは目を丸くして私が笑っているのを不思議そうに見ている。
「ごめんごめん。あのね…じつは私も、同じこと考えてたから。似た者同士なのかな」
話の内容が理解できないらしく、首をかしげる松崎くんに、私は今度は自分がカフェで購入したコーヒー豆が入った紙袋を彼に手渡した。
「これ、松崎くんにプレゼント」
「え……」
彼はさっきよりも驚いたような表情で、ある意味呆然としたようにそっと紙袋を開ける。
「お口に合うか分からないけど、飲んでみて」
私がそう言うと、彼は早口で
「お願いがあります」
と言った。
「うん。なに?」
「嫌なら突き飛ばしてくださいね」
「え?」
私が聞き返すと同時に彼にギュッと抱き締められた。
私はいったい今何が起きて、どんな風になっているのかまったく理解できなかった。
「すみません。ルール違反しちゃいました」
今までで一番近い距離で、彼の反省する声が聞こえた。