木に寄りかかって座り込み、目を閉じる。


「…どうする、ここから」


弁天台場まで走って行くにしてもここからでは遠すぎるし、馬では目立つ。
それに、途中の一本木関門を抜けるには多かれ少なかれ新政府と戦わなければならない。


「ははっ…我ながら無謀だな」


小さく呟く口内は、酷く乾いていた。
血を多量に失ったせいで眩暈もするし、目も霞む。

これでは人ひとり助けられないな、と自嘲したその時。



「……?」


薄れゆく意識の中、和早は思いもよらぬものを見た。



「おい! 大丈夫か!?」

「…土方さん?」


ついに幻覚まで見るようになったか。

だってそうだ。
土方は己が昨晩眠らせて…。

いや、土方のことだから気力で起きたのかもしれない。

となるとあれは。


「本物か…?」


だとしたら、計画が水の泡になったことになるが。