銃声鳴りやむことのない、血塗れた戦場。
函館市街地で指揮を執り、自らも前線へ赴いていた和早は、度重なる奇襲攻撃によって疲弊を極めていた。
「くっ……きりがないな」
刀を振るう手に力が入らなくなってきた。
それに、致命傷ではないものの数か所に流れ弾を食らっている。
…死ぬな、多分。
「第二部隊、下れ! 撤退だ!」
指示を出しながら、相手の首を狙って斬り込む。
返り血は既に全身を染めていた。
「新崎士官、あなたもお下がりください!」
「私はいい…まだ戦える」
助けなければならないのだ。
弁天台場で立てこもっている新選組を。
「そう、ですか…」
「わかったら行け。お前も死ぬぞ」
伝令役の少年に、冗談のうように笑いかける。
彼は頷き、走り去っていった。
…これでいい。
和早は銃弾の届かない、雑木林の中に身を隠した。