「お待たせしました」



「………」



沖田はじっと和早の手元を見つめた。


やはり、初めて見る刀だ。





「…それ、いい刀ですね」


「え? あー…そうですか?」




あはは、と慣れない笑いでごまかした。

なかなか鋭い。

確かに外装も手が込んでいるからそう見えるだろう。


実はこの刀、和早の父の形見であった。
新崎家に代々伝わる刀のうち最も優れている、大業物とされるもの。


これを取り出してきたのには、多少なりとも意味がある。






「平助君への餞別ですか?」



沖田の質問に、和早はやや間をおいて「ええ」と答えた。

握り具合を確かめるふりをして、沖田の横に立つ。






「私は、藤堂さんの選択に同意することも反対することもできません。…どちらかと言えば、反対ですけどね」



「なるほど」



「……だからせめて、自分の誠意だけは示そうと思いまして」






最高の仲間を見送るなら、最高の形で。




藤堂直々に試合を申し込まれた和早の、精一杯の餞別だった。






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