彼女の言った事が唐突過ぎて、ぼくの思考がリモコンで一時停止した様に止まり、会話が途絶えた。今日まで存在を知らなかった女の子が、まだ会ったこともないぼくに言う台詞だろうか。


「あの、大丈夫ですか?」


遠く向こう側から彼女の声が聞こえた。その声が思考の一時停止を解除させ、ぼくは正気に戻ることができた。


「あ、ああ…うん。大丈夫」


「ごめんなさい。
 突然こんなこと言っちゃって。
 変ですよね…今知り合ったばかりなのに
 友達になろうだなんて…」


彼女の悲しみにも諦めにも聞こえる呟きが、何故か、ぼくの心を動かした。


「いや、そんなことないと思うよ。」


自分の口から出た言葉が意外だった。そんな事を言うつもりはなかったが、これでいいのだと思った。


「それに、友達になるきっかけは
 お互いがお互いを知らないからだと
 ぼくは思う」


すると、向こう側から彼女の嬉しそうな明るい声が聞こえた。


「じゃ、じゃあ…」


「うん。そうだね。
 折角、友達ができる機会ができたんだ。
 断るわけがないよ。
 こちらからも、お願いできるかな?」


彼女は力強く「うん」と言った。声にビブラートがかかっていたので、泣いている様にも聞こえた。