慧人の手を振り解く。




慧人は、驚いた顔で私を見ている。







もう……いらない……。








家の玄関に飛び込んだ。




もちろん、慧人はついてこない。





ついてこれるはずはない。




先に彼が、この手を離したのだから。







洗面所で手を洗った。




慧人の温もりを全て洗い流したかった。






子供の頃から、何度も何度もつないだ手。




当たり前のように、自然に差し出されてきた手を忘れるように。




ゴシゴシと洗った。