ただ、共通の話題があったのが嬉しくて、つい言った事。



莉玖の演奏が聞きたいと……。




「私は妻のファンでしたが、また、息子のファンでもあります。来年、大学を受けなおして音大に行くそうです」



それが……莉玖の答え。





演奏が切り替わった。



「幻想即興曲ですね。これは、息子が始めて母親に褒められた曲なんです」



食事も忘れて聴き入っていた。




小さな莉玖が、この曲を弾いて、母親に頭を撫でられている光景を想像した。



演奏は30分で終わった。




店内中から拍手と歓声が上がった。




演奏を終えた莉玖がテーブルに向かってくる。



「美琴……」



「うう……感動しちゃった……」



オーナーが、すーっと席を立つ。




「これから、この席は君のものだ。さあ、座りなさい」



父親の変わりに、莉玖が座る。