「お年は?二十歳の誕生日は、過ぎましたか?」



「い、いいえ。これからです」



「なら、ノンアルコールで」



男性が囁くと、店員がサッと飲み物をグラスに注ぐ。




「あなたの二十歳の誕生日も、ぜひお祝いをさせて下さい。特別のシャンパンとワインをご用意致しますから」



「は……はい……」



カチカチに固まったまま、ナイフとフォークを手にする。



「フォアグラと黒トリュフのグリル、バルサミコソースかけでございます」



う……ええっと……。




「もうすぐ店内が暗くなります。そうしたら周りを気にせずに食べれますよ」


と、オーナーにウインクされた。





7時を回った頃、店内の照明が落ちた。



代わりに各テーブルにキャンドルが灯される。




店内のざわつきが一斉に止まった。



誰一人、雑談をする人間がいなくなった。