時間は6時50分だった。




約束の時間まで10分ある。




そわそわしていると、スーツを着た50代くらいの紳士がテーブルに来た。



「こんばんは、マドモアゼル」



「こ、こんばんわ……」




「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」


と、人懐こい笑顔が返って来た。




「私は、この店のオーナーです。今夜、あなたを招待したのは私ですから、どうぞごゆっくりおくつろぎ下さい」



オーナー?招待って……莉玖が呼んでくれたんじゃないの?!




「ですが……お一人で食事をされるのもお寂しいでしょうから、同席する事を許して頂けますか?」



へ?と紳士の顔を見詰めた。



「は……はい……」



「ありがとうございます」



と言って、テーブルの向かいの席に、男性が座る。




直ぐにボーイが来て、食事の用意を始めた。



テーブルに前菜が運ばれてくる。