結局、ちゃんとした返事をしないまま濁した。



慧人と別れた直後だし、莉玖もしつこく返事を求めてくるような事はしなかった。




次の講義は莉玖とは別々で、私は杏奈と卓真と三人で違う講義を受けていた。




「おや……噂をすれば……だな」


卓真が、教室の後ろをチラリと見る。




後ろの扉から慧人が入ってきた。




「わざわざ迎えに来てくれなくても良かったのに」



慧人の元へと飛んでいったのは、私――ではなく、長野亜衣(ナガノ アイ)だった。




濃い目の化粧と派手な服装の女の子。


時間がかかってそうな巻き髪は、夜の町にそのまま繰り出せそうな雰囲気だ。




「こりゃまた、ずいぶん趣向を変更したもんだね」


と、卓真が苦笑いする。





「うっそー、マジ?これもらっていいの?」



わざと――、私の方に手のひらを向ける。



指には、金色の指輪が光っていた。



「嬉しい!ペアリングだね」