「青山・・・星良・・・。」

厄介な敵だな、夏は心の中で呟いた。

「なつ・・・っ。うち・・・どうすればいいの・・・っ?」

しゃくり上げて泣きじゃくる杏里。どうしたらいいか分からなくて、夏は黙って杏里の隣に座った。

「ごめん・・・あたし、大層な恋愛したことないから・・・気の利いたこと言えないよ・・・。」


「いいよ・・・、うちこそごめんねっ・・・。夏、もう帰っていいよ。」


涙に濡れた頬を上げて杏里は笑ってみせた。
杏里のことが気になったけれど、亜由との約束もある。

「ごめんね、杏里・・・。」

ブロロロロ・・・

丁度、夏が乗るバスがやってきた。

「じゃあね、また話聞くから。」

「・・・うん。」

後ろ髪を引かれながら夏はバスに乗った。だんだんと小さくなる杏里の姿。



「はあ。」

こんなときにき気の利いた言葉が出てこない自分に無償に腹が立つ。

夏はイライラしたまま、下車駅で降りた。