「杏、ちょっと太った?」



笑いながら馬鹿にしてくる竣に、少し怒った表情を作る。
1ヶ月ぶりに会ったのに、最初の言葉がそれ?




「竣、最低。」




すかさず灯が言葉を挟み、あたしの方を向いた。
灯と顔を見合わせるとあたし達は2人で書店を去った。




「は?待って!冗談だって!」





慌てたように追いかけてくる竣の反応に、あたし達は笑いながら逃げた。





佐東 灯
あたしの唯一の親友。
小柄な体に可愛い真ん丸な顔。
栗色の髪の毛はまるで灯の優しさを表してるかのよう。




佐伯 竣
竣はたった1人の幼馴染。
ワックスでたてた黒い髪の毛に、しゅっとした目。
優しく包み込んでくれる竣は3歳からずっとあたしの一番の理解者。






2人の前でだけ、あたしは素直になれる。
全部忘れて、心から楽になれる。




2人とさえずっと一緒にいれるなら、これからのことなんてどうでもよかった。