マスターはカウンター越しの私の前から離れ、コーヒーを煎れ始めた。
ほっとして周りを見回してみる。
落ち着いた雰囲気の店内は、天然木をそのまま活かした形のカウンターやテーブルや椅子を使用している。
背の高い観葉植物が置いてあり、狭いながらも癒される空間を作り上げている。
ずっとここでコーヒーを飲んでいたくなる様な――
そんな気分。
そして店内に立ち込めるコーヒーのいい香り。
前回は色々あって、コーヒーが美味しかった事しか印象に無かったけど、なんだか、隠れ家的で素敵だなこの店。
そんな事を考えていた。
――カランコロン
入口の重厚な木で出来たドアが開くと、来客を告げるベルが鳴る仕組み。
今では滅多に見ない、懐かしい音とベルに感動して入口の方を振り返る。
「!!!!」
そこには、
私を見て驚いた様子の隼人さんが立っていた。