「両親は小峠さんを見て少しためらったけど、私を説得しようと必死だった。

だけど…」






『私が守ります!…ですから、大事な命を…どうか……殺さないで』




私達のやり取りを黙って聞いていたはずの小峠さんは、

突然、泣きながらそう叫んだの。






「彼女はね、結婚して10年も子供が出来なくて、ご主人と不妊治療を受けていたの。だけど、皮肉な事に私を助けてくれた頃に子宮癌が見つかって。
この日再開した時には、もう子供の産めない身体だった。

だから、私の事情を知っていて、お腹の赤ちゃんがどういう子なのか理解した上で、私に育てさせて欲しいと言ってきた。私の為には出産させた方がいいだろうし、赤ちゃんの為には自分達夫婦が育てた方がいいはずだって、彼女は必死にうったえてくれた。」




「……だから。」


「そうよ。私は優花を無事に産み、これこらの人生を優花に恥じない様に生きて行こうと誓った。

そして優花は、小峠の養女になって、自分の生い立ちは知らないまま、愛情を受けて育った。

私が優花に会う機会はなかったけど、事あるごとに小峠さんから写真が届いて。

歯がはえたとか、歩いたとか。

旅行に行ってきたとか、幼稚園に入園したとか……沢山たくさん。

会いたくて仕方なかったけど、そこに写る優花はいつも幸せそうだから、私も、頑張ろうって…写真を見る度に思ったわ。」