†

部屋に戻ると、すぐに電話が鳴った。


嫌な予感がする。


ザワザワと心が騒いだが、
実織がいた頃のままと変わらず、今この家にはここ俺の部屋の電話だけ。

俺が出ないわけにはいかなかった。



はい、とだけ告げ、電話に出ると、


『どうやら、まだくたばってない様だな』

冷たく、事務的な口調の声が、電話越しに聴こえた。


あぁ……、やはり予感は的中した。



「くたばったら、困るのはあんた達だろ」

ザワザワと騒ぐ心を抑え、俺は努めて冷静に応える。



『別に私は困らない。葬式の手配の手間が増えるだけだ』

「へぇ、わざわざ葬式出してくれんだ」

『一応、お前も〝真影〟の人間だからな。
……あぁ、くれぐれも人前で銃弾や刺されて死ぬなんて醜態は晒すなよ。
死ぬときは人目のつかない所で死んでくれ』



「〝死ぬときも〟だろ?」